離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「もしもし」
《和歌さん、夜分にすみません。おじいさまが倒れられました》
「えっ! おじいちゃんが!?」
何度も聞いたことのある秘書の声が、他人のもののように聞こえる。搬送先は白木家のかかりつけである『敬愛(けいあい)病院』だということだけ聞いて、わたしは電話を切った。
着信履歴を確認すると何度も連絡をしてくれていたらしい。倒れてから数時間経っている。
「和歌、おじいさまがどうかしたのか?」
「倒れたって……今、病院――」
ポロリと涙がこぼれた。張り詰めた気持ちが一気に崩壊していく。大切なものが続けて自分の手からこぼれ落ちていくのを止めることができない。
ただ茫然(ぼうぜん)として泣き続けるわたしを見た慶次さんは、自宅に向かっていた車を方向転換させて祖父の病院へ向かった。
到着する頃には我に返っていたわたしが夜間入口で名前を告げると、すぐに病室を伝えられる。早足で部屋に向かうと入口に秘書の方がいて、わたしの顔を見てホッとした様子だった。
「よかったです。連絡がついて」
「すぐに出られず申し訳ありません。おじいちゃんは?」
「今は落ち着いていらっしゃいます。どうぞ」