離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
ノックをして中に入ると、祖父がこちらを見て微笑んだ。しかしその顔には覇気がなく青白い。
「なんだ、大袈裟だな。みんな揃って」
「大袈裟なんかじゃないよ。大丈夫なの?」
駆け寄って祖父の手を取る。またひと回り小さくなった気がするのは、気のせいなんかじゃない。
「大丈夫だ。それにもう覚悟はできているから」
「やだ! そんなこと言わないで」
まるで子供のわがままのような口調になって、止まっていた涙があふれ出してしまう。
「和歌、仕方のないことなんだ。お前もその時に備えて準備しておきなさい」
祖父の言っていることは頭で理解できるけれど、感情がついていかない。
「慶次くんと話がしたい」
祖父は入口に立ち、黙ってわたしたちのやり取りを聞いていた慶次さんを手招きした。
「悪いが他のものは外に出てくれ」
「わたしも?」
「あぁ」
いったいどんな話をするつもりなのだろうか。わたしは不安を抱えたまま病室を出て、廊下で彼を待つことにした。