離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
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泣き顔の和歌が病室を出る前に俺を少し見つめた。その赤い目を見ると胸が痛くなる。ドアが閉じて室内には白木さんと俺だけ。
ゆっくりと歩み寄ると、その顔にはいつもの覇気がなく、俺の知っている白木さんとは随分と違って見えた。
「悪いな、こんな時間なのに」
「いえ、とんでもありません。早くお元気になってください」
「いや、なかなか無理なことを年寄りに言うな、君も」
笑っているが途中で咳き込んだ。慌てて人を呼ぼうとすると手を握って引き留められた。
「いいから、大事な話がある」
「はい」
苦しそうに息をしながらも、どうしても今伝えたいことだ。とても大事な話に違いない。俺は心して聞いた。
白木さんは俺の顔を見ずに、白い壁に視線を向けた。
「和歌と別れてやってくれ」
「えっ」
まさか俺たちの結婚を勧めてきた白木さんにそんなことを言われるとは思わず、俺は耳を疑った。
しかし白木さんはもう一度、次は俺の目をしっかり見て言った。