離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く

 なにはともあれわたしは祖父のことが大好きだし、信頼している。けれど何度も言うように結婚は無理だ。わたしにだって理想の恋愛や結婚というものがある。

 まさか本気の恋愛をする前に、結婚の話が出てくるとは思わなかった。こんなことなら、もっと積極的に合コンや紹介の話に乗っておくべきだったと後悔しても遅い。

 しかし積極的になれない理由はちゃんとあった。

 忘れもしない、大学に入学してすぐの頃。同じ授業を取っている男子生徒と仲良くなった。何度か食事に行ったりしてわたしもそれなりに楽しく過ごしていたけれど、ある日別れ際にキスされそうになってそれを拒むと彼は|豹変した。

『お前なんか白木の名前がなければ、誰が相手にするんだよ』

 大学入学後に仲良くなった親友の平谷唯(ひらやゆい)は負け惜しみだよと言ってくれたけれど、そのセリフが胸に刻み込まれて、それ以来男性に対して一歩引いてしまうようになった。

 そんな忘れたい出来事を思い出してしまい、ふるふると頭を横に振る。そうするうちに、約束の時間の五分前に案内された部屋に着いた。祖父が中に入ると、すでに到着していた男性はすぐに立ち上がって祖父に頭を下げた。
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