離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く


 名前だけの自己紹介が終わった後、仲居さんがやって来た。

「お飲み物はいかがしますか?」

「儂は、日本酒を……」

「ダメよ、おじいちゃん。お医者さまに止められているでしょう。……あっ」

 ここが見合いの席だというのも忘れて、いつもの強い口調で止めてしまう。

「……すみません」

 さっそく失敗して小さくなる。

「今日くらい……和歌はケチだな」

 子供のようにふてくされる祖父。見張っていないといつもこうだ。

「ははは、和歌さんはおじいさま思いなんですね。ではお茶をいただきましょう。和歌さんはどうされますか?」

「わたしもお茶でかまいません」

「慶次くんは飲めばいいだろ。たしかいける口だったはずだ」

「確かにそうですが、白木さんの前でひとりだけ飲むわけには。それに今日は和歌さんに私を知ってもらう大切な日ですから」

 彼はそう言うと、わたしの方に顔を向けてにっこりと笑った。
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