離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
 今日、役所でもらってきた。婚姻届をふたりで出しにいった時のことを思い出し、あの頃はまさかこんなに早くに離婚届を書くことになるとは思ってもいなかったなと、ちょっと感傷的になった。

 慶次さんは紙をジッと見つめている。わたしも黙ったままその紙を見つめる。

 不思議だな。わたしたちって結局こんな薄っぺらな紙で関係が終わってしまうんだな。でも始まりもそうだったのだから、そんなものなのかもしれないな。

 わたしひとりだけが楽しくたって意味ないものね。

「……か、和歌?」

「えっ、ごめんなさい。なに?」

 考え事をしていて、慶次さんの話を聞き逃してしまっていたみたいだ。彼に視線を向けると困ったような表情を見せた。

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