離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「あの……はい」

 ときめくばかりで、気の利いたセリフのひとつも言えずに焦る。ちらっと彼を見ると優しいまなざしをこちらに向けていて、余計に胸が高鳴った。

 そのうち飲み物と料理が運ばれてきて、食事をしながら世間話をする。とはいっても祖父と小田嶋さんの話をわたしは聞いていただけだ。

 祖父の様子を見ていると本当に彼のことを気に入っているらしい。それはそうか、わたしに見合いを勧めるほどの相手だもの。

 それだけでも小田嶋さんは十分信頼のおける人だということがわかる。

 話し方も丁寧で話題も豊富だ。祖父と話をしているけれど、わたしにもわかるように簡単な内容にかみ砕いてくれている。それに食事の際の所作も綺麗。こういうのは付け焼刃でどうにかなるものではない。彼の育ちのよさが見て取れた。

 落ち着いた大人の男性。今まで周りにいたのは年の近い学生がほとんどだったから、余計に彼が魅力的に見えてしまうのかもしれない。
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