離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
そして引っ越し当日。
わたしの持ち物はそう多くなかった。だけどキッチン家電や食器なども慶次さんが持っていけと言って、断ろうとしたら、新しいのを買ってやるなんて言い出した。結局、半ば強引に持たされたので、結構荷物が多くなった。
ふたりで使っていたお揃いのマグカップだけは最後に丁寧に緩衝材に包んで、わたしの手持ちのバッグに入れた。
慶次さんの手配してくれた引っ越し業者の作業の手際のよさはすさまじかった。あっという間にわたしの荷物を詰めてトラックに運び込んだ。
荷物がなくなりがらんとしたわたしの部屋を、掃除機と雑巾で綺麗にする。最後までベッドを持っていくかどうか迷ったが、祖父が選んでプレゼントしてくれたものだったので持っていくことにした。結局一度も夫婦で使うことはなかったけれど。
「和歌、行くぞ」
掃除が終わってなにもなくなった部屋を見つめていると、後ろから慶次さんに声をかけられた。そして彼は部屋の中を見て呟いた。