離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「ところで、和歌さんはまだ二十歳とお若くて、結婚には納得されていないのでは? そう急ぐ必要はないと思うのですが」
「それは、そうです……ね」
そういえばなぜ祖父がいきなりわたしにお見合いを勧めてきたのか、きちんと理由を聞いていなかった。
問い詰めたけれどのらりくらりとかわされて、結局今日まで教えてもらえなかったのだ。祖父の方を見ると急に神妙な面持ちになる。
「おじいちゃん?」
わたしの問いかけに、祖父は箸を置いた。
「いい機会だから和歌にも話しておく。慶次くんも一緒に聞いてほしい。儂はもう先があまり長くないようだ」
「なに、どういうこと?」
「だから、そろそろ向こうの世界からお呼びがかかりそうだということだ」
「えっ……」
急な祖父の告白に、わたしは手にしていた箸をポロリと落とした。
「わたしそんな話聞いてないよ」
「ああ、今初めて話した。いいから聞きなさい」
慌てるわたしの手を祖父が握った。わたしはギュッと口をつぐんで話を聞く。
「三カ月前の定期健診で、儂の心臓にガタがきていると言われた。まあでも、一、二年やそこらは問題ないだろう」
「そんな大事なこと、なんで言ってくれなかったの?」
衝撃が大きく、思わず涙目で責める。そんなわたしを見て祖父は眉尻を下げ、困った顔を見せた。
「そうやって泣きだす和歌を見たくなかったんじゃ」
「……そんなの、ずるい」