離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
近所にあった蕎麦屋はひっきりなしに客が出入りしていて、人気のようだった。味もなかなかで、今後お世話になることも増えるだろうと思いながら食事を終えた。
支払いも当然のように慶次さんが済ませてくれた。きっとここで財布を出しても彼が嫌な顔をするだけだからあえて出さない。
「ご馳走さま」
声をかけて外に出る。帰り道コンビニに寄って水やお茶、明日の朝に食べるパンとヨーグルトを買った。
そしてマンションの前まで来た時、彼の手からわたしはコンビニの袋を取った。
「ありがとう。ここまででいい」
「でも、どうせなら部屋まで送る」
慶次さんはわたしの手からコンビニの袋を取り返そうとする。しかしわたしはそれをさっと避(よ)けた。
「ここからはひとりで大丈夫。そうでもしないといつまでも頼っちゃうから」
そう、もう彼は十分すぎるほどわたしに時間もお金も使ってくれた。ここからはひとりで頑張らないといけない。
「別にずっと頼ってくれていいんだぞ」
「そういうわけにはいかないよ」
まもなく他人になる以上、そんなことできるはずない。