離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く

 記念日や誕生日だって忘れなかったし、わたしが少し体調を崩したりしてもすぐに気が付いてくれた。本当にすごい人だなぁ。

 新入社員の自分と比べるのは失礼だと思うけれど、改めて彼の偉大さを知った。

 わたし、すごい人と結婚していたんだなぁ。あ、まだ戸籍上は小田嶋のままだった。そういえば手続きは慶次さんに任せたままだ。

「はぁ……でも、とりあえずは仕事に慣れなきゃ」

 疲れ切った体を起こすこともできずに、わたしはコンビニで買ってきたお弁当を食べるのも忘れてその場で眠ってしまった。

 やばいやばいやばい。入社してまだ一週間なのに、遅刻はダメ、絶対!

 そのまま眠ってしまったわたしは、翌日ハッと目を覚ましたが、アラームをかけ忘れて寝坊してしまった。

 心配性だから普段は早すぎるくらいに出発するので、余計に焦る。シャワーも浴びていない状態で出社するわけにもいかず、急いで身支度を済ませて玄関で靴を履き飛び出した。こういう時オートロックだと鍵をかけ忘れる心配がなくて安心だ。

 するとちょうど左隣の部屋から男性が出てきた。引っ越しをしてきて初めて会う。こんな時だけれど、挨拶だけでもと思ったわたしはその人物の顔を見た途端、バッグを床に落とした。

「な、なんで!?」

 素っ頓狂な声をあげるわたしに、男性は極上の笑みを浮かべて挨拶をした。

「おはよう、和歌」

 それは一年半ほぼ毎日見てきた夫の、朝のさわやかな笑顔だった。
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