幸せな呪い

介護等体験が終わり、普通の大学生活に戻った。

空き時間をつぶすため、映画研究会とは名ばかりのぬるいサークルの部室で、動画を観てぐうたらしようとサークル棟へ足を運ぶ。
こんな状態で来年の今頃は就職が決まっているのか心配になるけれど、実習が終わった今はちょっとのんびりしたい。

部室のドアを開けると、ちょうど後輩が授業へ行くところだったので、彼らから鍵を預かり、ひとりで留守番をすることになった。

カバンを床に下ろし、スマホの画面を眺める。
ツイッターの通知を見て、それからトレンドをチェックした。
芸能人の離婚問題や政治家のゴシップに交じって上がっていたあるニュースが気になり、よく見てみる。

『医療的ケアを必要とする児童数、十五年で倍増』

見出しの言葉を読み、実習先で出会ったとうや君のことを思い出した。

彼のように、保護者がずっと付き添うことで登校できる児童はおよそ千二百人、保護者が付き添いのできない状況だったり、学校側の許可が出なかったりして学校へ通いたくても通えない医ケア児は二千人を超えるという。

とうや君も、お父さんが毎日付き添うことで学校へ通える医ケア児のひとりだったのだ。


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