幸せな呪い
……自己紹介のあと、『とうや君』と目線を合わせたかったけれど全然合わなくて、どうやってコミュニケーションを取ればいいのか迷った挙句、手を握らせてもらったっけ。
『それからすぐ、トーヤが大きなおならをした時、Uさんはこう言いました。
「びっくりしましたけど、トーヤ君の自己紹介が聞けて良かったです」
それを聞いて、なんて優しい子なんだろうって思いました。こういう時のリアクションに人柄が出ると僕は感じているのですが、Uさんは思いやりとユーモアのある実習生でした』
褒め過ぎですよ、とうや君のお父さん。
思わず目の前にあったチューハイのジョッキを空にしてしまった。
顔が赤いのはアルコールのせい、ということにしておこう。
「何か嫌なこと書いてあった?」
向かいの席の友達に聞かれ、曖昧に首を振る。
チューハイを追加して、スマホに視線を戻す。
そのままブログを続けて見ていると、更新と書かれた赤い文字が目に入った。
更新日時がついさっきで、タイトルは『Uさんへ』となっている。
タイトル名を見ただけで一気に酔いが醒めそうだ。
とうや君のお父さんが私に充てたメッセージ。
炎上してから更新されているところを見ると、私がこのブログを見つけることもお見通しだったのかも知れない。