幸せな呪い
ついさっき、学部主事からほんのちょっとだけ仕事の説明が行われ、配属先のクラス紹介、担任の先生との挨拶が終わったばかりで右も左もわからない。
朝は「お出迎え」からスタートすると言われ、玄関へ出てみたら大きな椅子を手渡され、謎の部屋へ行けという指示。
私は重たい椅子を片手に、もう片方の手に自分のバインダーを挟んで校舎内へと戻った。
「医ケア室」
古びた校舎の中で、ここのドアだけが新しくてピカピカだ。緊張を感じながらノックした。
「失礼します。実習生の上田優です。椅子を運ぶように言われて来ました」
かすかに、男性の声で「どうぞ」という返事が聞こえたので、一度椅子を床に置いてからドアを大きく開けた。
初めて見るその部屋は、保健室というより病院の「処置室」に近いなと思った。
目の前にはベッドが二つ。
クリーム色のカーテンが天井からぶら下がり、壁側にはベンチと医薬品用の棚が見える。保健室との一番の違いは、そこには既に医療的ケアを受けている子どもが寝ているということ。