幸せな呪い
半分開いているカーテンから見えたのは、黄色のタオルケットが掛けられた小さな男の子。
やや長めの髪型で、丸顔。血管が透き通るような白い肌と、涙が溢れそうなほど潤んだ瞳は、外出が難しいことを物語っている。
ベッドの横には、ストレッチャーのように体を横にしたまま運べる車椅子が置いてあった。
車椅子と並べて置いてあった機械から伸びた白いコードが、男の子の指に巻き付いている。
一目で「医療的ケアが必要な子ども」であることがわかった。
「おはようございます。はじめして、だよね?」
私が男の子を見ていると、カーテンの端から男性が現れた。
デニムにグレーのパーカーというラフなスタイルから、ここの先生ではないだろうと予想する。
「おはようございます。はじめまして、上田と言います」
お辞儀をしてからネームプレートを見せると、部屋の隅に椅子を置くように促された。
そして笑顔を浮かべた男性が矢継ぎ早に質問をしてきた。
「実習はいつまで?」
「今日と明日の二日間です」
「どこの大学で何年生?」
「K大の三年です」
「地元はどこ?」
「市内です。ここで生まれ育ちました」
「先生になりたいの?」
一瞬、考えてしまった。
さっきまでの質問が答えやすかったために、いきなりのヘビーな問いに、取り繕う体制が整わない。