幸せな呪い
「びっくりしましたけど、とうや君の自己紹介が聞けて良かったです」
「ははは。優しいなあ、名前の通りに育ったんだね」
「いえ、名前負けしていて恥ずかしい限りです……」
そんなことを話していると、チャイムが鳴った。
「ごめん、引き留めちゃったね。ここに居て大丈夫?」
お父さんが心配している。
そうだった、私はただ、椅子をここへ置きに来ただけ。
「こちらこそすみません、長居してしまいました。自分のクラスへ戻ります。とうや君、またね」
玄関へ戻ると、先ほどの学部主事がバスの前に立ち、降りてくる子ども達の手を取りながら挨拶をしていた。
一瞬『遅かったわね』という視線を投げかけられ、頭を下げることしかできなかった。
子ども達に向ける柔らかい視線と、私達実習生に向けられる鋭い視線の差に、この仕事の厳しさを垣間見た。
ここで働くのはかなり困難だろう……色々な意味で。