幸せな呪い
女性がふふふと笑って、私にネームプレートを見せてくれた。
「看護師の高坂です。ここと医ケアが必要な子どもの教室を行ったり来たりしています」
そう言って、とうや君の目の前で、注射器のようなものを出している。
注射器にしてはかなり大きめのものだ。中にはクリーム色の液体が入っている。
「はい、登也くん。ごはんだよ~」
ごはん? これが?
「登也、いただきますするぞ」
とうや君のお父さんが、彼の手を取り、胸の前で合わせた。そして、私を呼んだ。
「上田さん、よかったら食事中の話し相手になってくれないかな」
「あ、はい……いいんですか?」
「もちろん。初めて見るでしょ、これも」
お父さんが指し示すところを目で追う。
看護師さんが持っている巨大な注射器の先にはチューブが付いていて、そのチューブはとうや君の胴体に繋がっているようだ。
「胃ろうっていうんだ。聞いたことはあるんじゃないかな」
「はい。確かご飯を胃に直接送り込むんですよね?」
「正解。こうなっているんだよ」
お父さんはチューブが付いている胴体を、少し見せてくれた。