夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
2章
久世の家に戻ってから、まず、したことは、祖父との和解だ。
「お爺さま、わがまま言ってごめんなさい。あと、心配かけてごめんなさい」
「わしも、焦るあまり亜梨沙の気持ちを確認せず、話を進めた。無事に帰って来てくれた、それでいい」
久世の当主として、謝ることを良しとしない頑固な祖父なりの精一杯の謝罪らしい。
「あのね、向こうでお爺さまに湯呑みを作ってきたの」
箱から取り出して見せると、顔を綻ばせ、手に取って色々な角度から見つめる祖父。
「おー、なかなかいいの。亜梨沙は陶芸の才があるのかもしれんの。百合子さんも、ほれ、見てみ…」
所詮、陶芸初心者が作った物だ。
不細工な湯呑みでしかないが、祖父の浮かれ具合とべた褒めに、母も「よかったですね。これから、この湯呑みでお茶にしましょうね」と笑っていた。
帰宅した父にも、連絡を怠った謝罪をして、父と母には、夫婦茶碗。久世家の使用人の方々には、地元のお菓子をお土産として渡した。
翌日には、台風が本土に上陸したが、山脈のおかげで海上にそれていった。
だが、あちこちでの被害状況のニュース番組が放送される。胸が痛む被災地もあった。
祖父は、すぐにどこかに連絡をとり、大きな金額を動かした。
「久世であるなら、世のために金を惜しんではならん」