Tear Flowers〜奪われた未来〜
「絶対……!絶対に、死なせません!あなたがいなければ、特殊捜査チームはどうなるんですか!?あなた以外に、リーダーは務まらない。だから、そんなことを言わないでください……」

ぼやける視界の中、シオンの手がフィオナの濡れた両頬を包む。その手は弱々しく、シオンは涙を浮かべて微笑んでいた。

「……特殊捜査チームを頼む……」

「シオンさん!」

「ありがとう……。あなたに、みんなに、会えて……本当に、いい人生……だった……」

「いかないで!!」

力を失ったシオンの手が、地面にゆっくりと落ちて行く。フィオナはまだ温かいシオンを抱き締め、叫んでいた。



バスから離れたビルの屋上、スコープ越しに血だらけになって動かなくなったスーツ姿の女性を見て、男性は笑みを浮かべる。

「よし、これでまた邪魔者が一人減った」

目的を果たしたのなら、長居は無用だ。ライフルをケースに丁寧にしまった後、男性はゆっくりと立ち上がって屋上に黒いバラの花びらを撒き散らす。今日、殺した女性の髪のような黒いバラの花びらを撒く。
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