Tear Flowers〜奪われた未来〜

「そこのケーキ屋さんね、タルトとシュークリームがすっごくおいしいんだ。一回食べたけど、今まで食べたケーキの中でダントツおいしいよ！きっとフィオナやみんなも好きになると思う」

エヴァンが楽しそうに話す中、フィオナは無表情のまま相槌を打つ。笑顔と無表情という正反対の組み合わせは、側から見たら居心地が悪そうだと思われるだろう。そう思われることを申し訳ないと思いつつ、フィオナはこの空気が心地いいと思っていた。

（エヴァンの隣にこうしていることが、一番心が落ち着いている……）

繋がれた手の温もりにフィオナの心が安らいでいく。すると、白い小さな建物が目に入った。あれがおいしいと噂のケーキ屋さんらしい。おいしいと評判なだけあって、お店の中は人であふれていた。

「ここのお店の唯一のマイナスポイントは、お店があんまり広くないことかな〜」

エヴァンがそう言いながらお店の中に入っていく。一歩お店の中に入れば、そこはおいしいケーキを求めて集まった人たちによる争奪戦だ。人気のケーキはあっという間に奪われてしまうため、エヴァンが素早く店員さんに注文する。