シングルマザー・イン・NYC
美容師、留学生(?)と出会う
ニューヨークに来て二回目の春。
ようやく生活に慣れ、下手だった英語も日常生活や仕事で困ることはなくなった。
以前は東京の美容室で働いていたのだが、ある日突然、
「マンハッタン店のオープンスタッフとして渡米してくれないか?」
と店長に打診された。
あの時は悩みに悩んだ。
当時二十五歳だった私は、留学はもちろん、海外旅行すらしたことがなかったから。
だが海外へのあこがれはあり、しかも顧客のほとんどは日本人だというので、
「それなら今の職場と大して変わらないかな」
と、最終的には気楽な気持ちで引き受けてしまった。
こういう大胆なところが、私にはある。
住まいは約百年前に建てられたアパートだ。
床はオーク材。
壁、ドア、窓枠などすべて白のペンキで塗ってある。
天井は驚くほど高く、一目見てすぐにこの部屋を気に入った。
同じ美容室で働いているアレックスがルームメイト。
部屋に鍵をかけエレベーターで一階に降りる。
ドアマンに朝の挨拶がてら世間話をし(この国では会話は意外と重要だ)、朝食は歩きながらリンゴをかじるか、ベーグルかドーナツを買って食べる。コーヒーは朝淹れたのをボトルで持ち歩く。
会社が家賃の半額を負担してくれているとはいえ、マンハッタンの物価は高い。
切り詰めるべきは食費と娯楽費。
そんな質素な生活の中、私が見つけた楽しみはメトロポリタン美術館に通うことだ。
年間チケットを買えば、格安で通うことができる。
今日は仕事が休みだ。
私は迷うことなく、セントラルパークに向かった。
ニューヨークの真ん中にある巨大な公園。
南北4キロ、東西0.8キロ。
私はアッパーウェストサイドと呼ばれるエリアに住んでいるので、メトロポリタン美術館に行くためには、西から東にからセントラルパークを横断する。
とても大都会の真ん中とは思えないほど自然豊かな公園で、春先の今は、紫、黄色、白のクロッカスが咲き始めたところだ。
ふさふさの尻尾が愛らしいリスたちが、元気に動き回っている。
ようやく生活に慣れ、下手だった英語も日常生活や仕事で困ることはなくなった。
以前は東京の美容室で働いていたのだが、ある日突然、
「マンハッタン店のオープンスタッフとして渡米してくれないか?」
と店長に打診された。
あの時は悩みに悩んだ。
当時二十五歳だった私は、留学はもちろん、海外旅行すらしたことがなかったから。
だが海外へのあこがれはあり、しかも顧客のほとんどは日本人だというので、
「それなら今の職場と大して変わらないかな」
と、最終的には気楽な気持ちで引き受けてしまった。
こういう大胆なところが、私にはある。
住まいは約百年前に建てられたアパートだ。
床はオーク材。
壁、ドア、窓枠などすべて白のペンキで塗ってある。
天井は驚くほど高く、一目見てすぐにこの部屋を気に入った。
同じ美容室で働いているアレックスがルームメイト。
部屋に鍵をかけエレベーターで一階に降りる。
ドアマンに朝の挨拶がてら世間話をし(この国では会話は意外と重要だ)、朝食は歩きながらリンゴをかじるか、ベーグルかドーナツを買って食べる。コーヒーは朝淹れたのをボトルで持ち歩く。
会社が家賃の半額を負担してくれているとはいえ、マンハッタンの物価は高い。
切り詰めるべきは食費と娯楽費。
そんな質素な生活の中、私が見つけた楽しみはメトロポリタン美術館に通うことだ。
年間チケットを買えば、格安で通うことができる。
今日は仕事が休みだ。
私は迷うことなく、セントラルパークに向かった。
ニューヨークの真ん中にある巨大な公園。
南北4キロ、東西0.8キロ。
私はアッパーウェストサイドと呼ばれるエリアに住んでいるので、メトロポリタン美術館に行くためには、西から東にからセントラルパークを横断する。
とても大都会の真ん中とは思えないほど自然豊かな公園で、春先の今は、紫、黄色、白のクロッカスが咲き始めたところだ。
ふさふさの尻尾が愛らしいリスたちが、元気に動き回っている。
< 1 / 251 >