シングルマザー・イン・NYC
地下鉄にしばらく乗り、カナル・ストリートで降りた。
地上に上がるとそこは――私が見知っているニューヨークよりも雑然としていた。
なんだかごみごみしていて、明らかに偽物だろうブランドバッグを道路に広げている人たちまでいる。
多くの中国人と観光客が行き交い、うっかりするとはぐれてしまいそう――少し先を行く彼の背中を見て思った時――篠田さんは振り返って立ち止まった。
そして、「大丈夫?」と手を差し出した。
手!
手をつなぐタイミングってこと……?
なんか、それ、改まってされるとすごく照れる。
――躊躇する私の心中を察したのだろうか、篠田さんは「あ、ごめん」と、手を引っ込めようとした。
でもそんなふうにされたら、逆に触れたくなって、私は篠田さんの手をそっと掴んだ。