シングルマザー・イン・NYC
カミーユさんは、ほぼ毎朝10時にやってきて、私が彼女の髪をその日の予定に合わせて整える。

「自宅の一階を美容室にしたのは、大正解だったわ」

タイトに結った美しい銀髪を鏡で見ながら、カミーユさんはご満悦。

「いつでも完ぺきなヘアに仕上げてもらえるから。ありがとう、キワ」

「どういたしまして」

「慧はどう? ナニーとはうまくいってる?」

「はい。とても明るくて面倒見がいい人で。マリアにしてよかったです」

マリアはコスタリカ出身の四十八歳。

十四歳の時に両親とともに移民し、二十五歳で米国人と結婚。
一人息子が三年前に大学に入って家を出てから、ナニーとして働き始めたそうだ。

はじけるような明るい笑顔の持ち主で、慧は初めて会った時から気に入った様子だ。

「あー、うー」

と、私の腕の中からマリアに手を伸ばした。

そんな慧の小さな手をマリアは優しく握り、

「はじめまして、慧。あなた、最高にかわいいわね!」

と話しかけた。
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