シングルマザー・イン・NYC
マリアはとても融通の利くタイプで、慧の面倒を見るだけでなく、簡単な家事もこなしてくれる。
「お天気のいい日はお散歩に行くので、買い物があれば、ついでに行ってきますよ」
と申し出てくれたのは、嬉しい驚きだった。
「いいの?」
「ええ。慧もスーパーに行けば色々なものが目に入って楽しいと思いますし、私もついでに自分のお買い物ができますから。ノープロブレムです」
「助かる、ありがとう」
アレックスと私は週一回、慧を連れてスーパーに買い出しに行っていたが、どうしても生野菜がしなびてしまったり、不足する食品が発生する。
だから、ちょこちょこ買い足してもらえるのはすごく助かるのだ。
さらにマリアは、頼めば夕食も調理しておいてくれ、これまた大助かりだった。
特に「ガジョ・ピント」という黒豆などを使ったピラフのようなものが美味しくて、いつのまにか毎週金曜日の夕食は、ガジョ・ピントとオージャ・デ・カルネという野菜と牛肉の煮込みが定番になった。