シングルマザー・イン・NYC
慧は「あー」と上目遣いにアレックスを見ると、思い切りよく積み木を手のひらで払った。

コトコトコトッと、絨毯に柔らかな音を立てて散らばった積み木をみた慧は、手を叩いて大喜び。

その拍子に、おむつで膨らんだわいいお尻が床の上をぴょこぴょこ跳ねる。

わが子ながら、なんとかわいいのだろう。

私はキッチンで淹れてきたコーヒーの入ったカップ二つをテーブルに置くと、慧を抱き上げた。

「かわいいねえ、慧は。いつも元気で楽しそうで、お母さんは嬉しいよ!」

「俺もだぞー」

今度はアレックスが慧を高い高いする。

キャッキャッと慧は大はしゃぎで、でもその笑顔を見ていたら、幸せでいっぱいのはずの胸がちくりと痛んだ。

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