シングルマザー・イン・NYC
「繊細なのね」

ふふ、とカミーユ夫人がほほ笑んだ。

「希和は、もう怒っていないと思うわよ? それに今日会わなかったら、本当にもう一生会えないかも」

「私もそう思うよ。今は一議員だが、近い将来君は、政府の主要なポストに就くだろう。そうなったら、ニューヨークに来る機会はあっても、こうして自由な時間は取れないよ」

この人達は、どうしてこんなに俺を希和に会わせたがるのだろう。

厚意はありがたい。

だが、俺たちにもう未来はないのだ。

会わない方がいい。

「おてて、ぐーになってるよ」

ケイが、握りしめた俺の右こぶしにそっと、その小さな手を重ねた。
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