シングルマザー・イン・NYC
ケイと過ごしたことは意外なほど心に残り、ニューヨークからワシントンD.C.に移動した後も、ふとした瞬間に彼のことを思い出した。
国立自然史博物館に立ち寄った時もそうで、ミュージアムショップに並ぶ商品を眺めていた俺は、つい、ケイが喜びそうなものをいくつか手に取っていた。
恐竜のぬいぐるみ、絵本、図鑑、パズル、そしてTシャツ――何を考えてるんだ俺は、これをケイにどうやって渡そうというのだ。
「篠田先生、親戚のお子さんにお土産ですか?」
先輩議員の木下先生が声をかけてきた。
「あ、いえ……知り合いのお子さんにと思って――」
そう答えた手前、商品を棚に戻すことはできず、レジに持って行って購入した。
ホテルに戻った俺は、それらをどうしたものかと考えた。
(そういえば、ケイには名乗ってなかったな)
ケイは、俺が篠田樹だということは知らないはずだ。
それなら、ローゼンタール夫妻に送って、彼らからケイに渡してもらえばいい。
俺からだということは、希和にさえ黙っておいてもらえば問題ないだろう。
我ながら、いい案だ。
俺はフロントに行き、ケイへのプレゼントをローゼンタール夫妻宛てに送る手配をした。