シングルマザー・イン・NYC
「はい」

嬉しくて、即答してしまった。

篠田さんは、

「ありがとう」

とだけ言うと、ふうっと息を吐いた。

「……緊張した。良かった、いい返事で。送って行ってもいい?」

気付けば、辺りはもう暗くなってきている。

「ありがとうございます」

私たちはハドソン川を右手に見ながらしばらく歩き、やがて左に曲がり、林の中の坂道を抜け、瀟洒な住宅街に出た。

マンハッタンにはアパートしかないと思っている人もいるみたいだけど、実は一軒家もある。

このエリアの一軒家のことを、アレックスは「ブラウンストーンのタウンハウス」と言っていた。

難しいことはわからないが、私が見るに、「茶色いレンガを使った地上三~五階・地下一階建ての一軒家」という感じ。

日本とは違って、隣同士の家の壁はびったりとくっついている。
これはほんと不思議。
建て直すとき、どうするのだろうか。

もっとも、これも日本とは異なって、とても古い建物が普通に使われているので(私が住んでいるアパートも築90年)、あまり建て替えのことを考える必要はないのかもしれない。
地震もないし。

タウンハウスの幅は狭い。
その点は、日本の狭小住宅に似ている。
入り口に十段くらいの階段があるのも特徴だ。
< 15 / 251 >

この作品をシェア

pagetop