シングルマザー・イン・NYC
「――そんなわけで、とても驚いたの」
私はサロン・ローゼンタールに出勤すると、アレックスに今朝の出来事を語って聞かせた。
今日最初のお客様は十時半のご来店なので、時間に余裕がある。
朝食の残りのパンケーキをスタッフルームで広げた私に、アレックスはコーヒーを淹れてくれた。
「そりゃあ、衝撃だったね」
テーブルの向かいに座ったアレックスは、頬杖をついた。
じっくり話を聞こうとするとき、彼はよくこの姿勢をとる。
「うん」
「で、どうするの」
「どうするって?」
「篠田さんと慧のこと」
「……どうしよう」
何をどうすればよいのか……。
「アレックスならどうする?」
「俺? ……そうだな、まずはカミーユさんに質問だな」
「なるほど! カミーユさんにきけば、篠田さんが慧を自分の息子だと知ってるかどうか、わかりそうだものね」
思いつかなかった。
私はよほど動転しているのに違いない。