シングルマザー・イン・NYC

鋭い指摘にはっとした。

そうだ。

私はきっと、慧を篠田さんに会わせようとしなかっただろう。

「だから、まず二人を会わせて様子を見るのが良いのでは、と思ったの。夫も同じ意見だったし」

「――そうですか。その時の慧と樹の様子は?」

「とても楽しそうだった。イツキは子供の扱いに慣れていない様子だったけど、ケイを抱っこして、すぐに打ち解けて」

「彼の子供だと伝えたんですか?」

「いえ。キワの息子、とだけ」

「え……それ、言っちゃったんですか!? 篠田さんの子供だと伝えたも同然じゃないですか!」

思わず声が大きくなり、他のお客さんたちの視線が私たちに集まった。

「落ち着いて、キワ。勝手なことをして本当にごめんなさい」

カミーユさんは、テーブル越しに彼女の右手をそっと私の左手に載せ、神妙な面持ちで詫びた。

「でもね、不思議なのよ……。イツキは、慧が自分の息子だとはまったく気づいていない様子だった。そこまで鈍い人とは思えないんだけど」
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