シングルマザー・イン・NYC
「ママ、おかえりー」
「おかえりなさい」
いつもの時間。いつもの挨拶。
帰宅すると、慧とナニーのマリアが笑顔で迎えてくれた。
「ただいま」
「頼まれていた豆ごはんに牛肉と野菜の煮込み、作っておきましたよ」
「ありがとう」
マリアが作ってくれる料理はどれもおいしいが、この二品が私は――慧とアレックスも――大好きで、慧が赤ちゃんの頃から、何度も作ってもらっている。
鍋にたっぷり入っているから、明日、アレックスにも持って行ってあげよう。
「今日は僕も手伝ったんだよ」
「偉かったね。難しくなかった?」
「全然。マリアに言われた通り、炒めたりお水入れたりしただけだから」
「とても上手に作業してくれましたよ」
「今度は包丁持ちたい。僕、料理好き」
「じゃあ、今度やってみましょうか。ケイに包丁使わせてもいいですか? キワ?」
「……そうね、いいわよ。慧、怪我にはくれぐれも気を付けてね」
「うん、わかった」
素直に頷く慧。
彼の顔つきは最近、篠田さんにとても似てきている。