シングルマザー・イン・NYC
「キワ、目、赤いよ」

「うん。慧にも言われた」

かわいい慧は今朝、「ママ、寝不足?」と心配してくれた。

「拒絶されるって、こんなに辛いんだね」

篠田さんの時もだが、彼以前に付き合った人たちにも、私は自分から別れを告げてきて、だから、拒絶された側の痛みというものを知らなかった。

もし知っていたら、あの時、篠田さんと別れなかっただろうか。
今頃は、慧と三人で幸せに暮らしていただろうか。

「父のことがあったでしょ。いつの間にか、臆病で意固地になりすぎていたみたい」

ポタッと音がして、テーブルに涙が滴った。

アレックスは静かな声で

「かわいそうに」

とだけ言うと、ティッシュの箱を取ってくれ、私は涙を拭いて鼻をかんだ。
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