シングルマザー・イン・NYC
「でも、よく考えたら何も変わっていないんだよね。篠田さんとはずっと前に別れて、お互い別々の生活をして、慧だって、もう小学生になったんだよ? それがたまたま昨日テレビで篠田さんを見て、一日の間に色々あって――」

アレックスは黙ってスプーンを動かしている。

「だから、今はちょっとショックを受けているけど、すぐ元に戻れると思う」

そう。たった一日の出来事だったんだから。

「そうだといいけど――無理すんなよ」

優しい言葉に、また涙が出た。


サロンで気を張っていたせいだろうか、帰宅後、どっと疲労感に襲われた。

今日は予約がほぼびっちり入った一日だったうえに、合間にカミーユさんが「ごめんなさい、急用ができて。簡単にでいいから髪、アップに仕上げてくれる?」と駆け込んできたりして、働きづめだった。

そのせいで、私は慧のベッドで読み聞かせをしながら寝落ちしてしまった。

目を覚ましたら、もう翌朝の六時半。

まずい。

大慌てでシャワーを浴び、身支度を整えなくては。
私はベッドから飛び起きた。

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