シングルマザー・イン・NYC
「ママさー、よっぽどお疲れだったんだね」

小さな背中に不似合いな大きなリュックを背負って、私と手をつないで歩く慧がくすくすと笑う。
右手にはぬいぐるみのブラちゃん。

慧が「ブラキオサウルスだからブラちゃん」と命名した。

「今日は、出しとく。仲間がいっぱいいる場所に行くから」

「先生に注意されたら、すぐリュックにしまってね」

「うん」

すぐ前を、ヘンリーに連れられた犬たちが尻尾を振りながら歩いている。
みんな慧のことが大好きだから、ときおりこちらを振り向いてくれる。

いつもの――いや、いつも以上に楽しい朝。
私は大丈夫。

「ママ、僕より先に寝ちゃって。本読みながら寝る人がいるなんて、驚いちゃった」

「ごめん」

「いいよ、別に。一人で続き読んで寝たから。久しぶりに一緒のベッドで嬉しかったし」

慧が、うふふと笑う。
本当にいい子に育ってくれた。
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