シングルマザー・イン・NYC
「びっくりしたよね、イツキの勘違いには」

午後二時。
私たちの部屋でカレーを食べながら、アレックスが笑った。

「いや、僕でも間違えたと思う。キワとアレックスは仲が良すぎて、しかも赤ちゃんだった慧まで連れて楽しそうに散歩していたら、夫婦に見える。その時の彼の落胆ぶりが目に浮かぶ」

アレックスのパートナーであるジェイドは冷静に呟いた。

ブロンドに青い瞳のジェイドに、黒髪に茶色い瞳のアレックス。

タイプは違うけど二人とも美形で、並んでテーブルについている彼らを見ると、本当にお似合いだなあと思う。

「ジェイド、カレーはどうだった?」

彼にカレーを食べさせたのは、これが初めてだ。

「うん、美味しい。この赤いピクルスが特に」

「フクジンヅケって言うんだよ」

得意げなアレックス。

「……フク……難しいな……ところでキワ、結婚したらどこに住むの? サロンは?」

ジェイドがきいた。

「そうだよ、お母さん。僕、東京とニューヨーク、どっちに住むの?」

「……どっちかな……」
< 206 / 251 >

この作品をシェア

pagetop