シングルマザー・イン・NYC
「……違和感……って言っちゃいけないよな……」

「そう? 正直でいいと思うけど」

「……希和のそういうところ、好き」

樹さんが楽しそうに笑う。

彼の笑顔を見るたびに、私は幸せで満たされる。私も、樹さんにとってそういう存在でいられたらいい。

「世間の反応が楽しみだ」

「世間?」

「そう。俺の指輪に気付くかどうか」

そう言われて、この人は公人だったんだ、とはっとすると同時に心配になった。

「ねえ、仕事のときは外せば?」

「それじゃ、意味ないじゃないか。『私は結婚してます』と知らしめるためでもあるだろ」

「そうだけど――私たちの関係、ちょっと説明が難しいかも――」

「慧のこともあるし、最初からはっきりさせておいた方がいい。不必要なことや誤解を招く表現は避けるけど、基本的には、きかれれば事実をそのまま話す――希和が嫌なら考えるけど。どうする?」
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