シングルマザー・イン・NYC
「慧にメモを残してやらないと。起きて知らない部屋に一人だったら、驚いてかわいそうだろ――そういえば、向こうではどうやって寝かせてたの?」

「一人だよ」

米国では、赤ちゃんの頃から一人で寝かせるのが当たり前だ。
さすがに私はそこまでしなかったけれど、慧は二歳くらいから一人部屋だ。

私たちはキッチンに戻り、朝食室のテーブルで手紙を書いた。

『慧へ

おはよう。お父さんの部屋で眠っています。起きたら廊下に出て、左の部屋のドアをノックしてね。

お母さんより』


『慧へ

おはよう。空港で会ってすぐに眠ってしまったんだよ。覚えてる? 目が覚めたら、ご飯を食べよ
う。お腹が空いているだろうから。もし夜でも、気にしないでお父さんの部屋においで。

お父さんより』
< 226 / 251 >

この作品をシェア

pagetop