シングルマザー・イン・NYC

結婚の報告

翌朝、カーテンの間から差し込む日の光で目を覚ました。

隣を見ると、樹さんはいない。

慧は、もう起きただろうか。

床に落ちていたバスローブを羽織りリビングに行ってみると、慧が眠っていたソファベッドは元通りの形に戻してあり、毛布もきれいに畳んである。

静かだ――そう思った時、ドアベルが鳴った。


「お母さん、時差ボケでしょ。はい、お茶」

慧が、ペットボトルのほうじ茶をテーブルに置いてくれた。

「ありがとう。何時に起きたの?」

「五時。お手紙読んだよ、ありがとう。でもお母さん、ノックしても起きなかった」

「……ごめん」

「いいよ、俺が気付いたから」

「二人でお風呂入って、外で朝ごはん食べて、スーパーで買い物して帰ってきたんだよねー」

私が起きたのは十一時半だった。

「そう。どうだった? 東京の街は」

「きれいだった。スーパーもおもしろかった。おにぎり、すごくたくさんの種類が売ってて。いっぱい買ってもらった」

「どうぞ」

樹さんが差し出したビニール袋から、慧は一つずつ、おにぎりを取り出した。鮭、いくら、ツナマヨ、鶏五目、高菜、シラスと梅、ひじき、たらこ、昆布の佃煮。どれもおいしそうだ。
< 229 / 251 >

この作品をシェア

pagetop