シングルマザー・イン・NYC
母と三十分ほど過ごし、私たちは実家を後にした。

タクシーを呼ぼうとしたのだが、年末の土曜日のせいか電話がつながらない。

「希和、最寄り駅まで何分?」

「五分くらい。南北線」

「そんなに近いんだ。ヒールだけど、歩くのきつくない?」

樹さんは、私が滅多にヒールをはかないのを知っているので、心配してくれているのだ。優しい。

「大丈夫だよ」

「じゃあ、地下鉄で行くか」

「えっ、地下鉄あるの!」

慧が反応する。乗り物は大好きだ。

「あるよ。東京の地下鉄はすごいよ。時間ぴったりに来るから」

ニューヨークの地下鉄に時刻表はなかった。
 
南北線は、休日の利用者がさほど多くない。駒込駅に人はまばら、車内も空いていたので、私たちは三人並んで座ることができた。

「きれいだねー。清潔って感じ」

慧は興味津々、といった様子で、車内を見回している。

「実家に行く前に寄りたいところがあったから、南北線に乗れてちょうどよかった」

「寄りたいところ?」
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