シングルマザー・イン・NYC
そう言われれば、身にまとう上品で華やかな雰囲気がよく似ている。
年齢も同じくらいにだろう。

「やあ、光子さん。相変わらずお綺麗だ」

「……お義兄さんまでいらっしゃるとは。公務は大丈夫ですの?」

「今日はたまたま、時間があってね」

「――どうぞ」

お義母さまは、私たちを招き入れた。
 

「紹介する。妻の希和と、息子の慧。留学先で出会って婚約したんだけど別れて。慧は俺と希和の息子で、今まで彼女が一人で育ててくれた。今は一時帰国中で、入籍は昨日済ませたから」

すらすらと話す樹さんを、お母さんは黙って見つめている。
私の方は、見ようとしない。

私たちは応接間で低いテーブルを囲んで座っているところだ。
樹さん、慧、そして私は三人掛けのソファに。
お義母さんと総理はそれぞれ、一人掛けの椅子に。

何かおっしゃるかと思ったが、お義母様は黙ったままで、気まずい沈黙が流れた。
それで私は、自分から挨拶してみることにした。

「希和です、突然ですみません。よろしくお願いします」

頭を下げてしばらくしても、返事はなかった。
< 236 / 251 >

この作品をシェア

pagetop