シングルマザー・イン・NYC
――どうしようかな。
お母様が何かおっしゃるまで、頭を下げているのが良いのだろうか――。

悩んでいる私の背中に、(もういいよ)とでも言うように樹さんの手が触れたその時。

「おばあちゃん、怒ってるの?」

沈黙を破ったのは慧だった。
私は驚いて顔を上げた。

「ちょっ……慧、すみません、お義母様」

「……怒ってないわよ」

お義母様はすました表情で言った。

「ほんと、おばあちゃん?」

「ええ。樹ったら――あなたのお父さんのことだけど――、お義兄さんまで連れてきて。ずいぶん私が扱いにくい人間みたいじゃないですか」

お義母様が樹さんと総理を交互に見た。

「いや、光子さん、それは誤解だ。私が勝手についてきたんだよ」

「同じようなものでしょう」

お義母様は小さくため息をつくと、私の方を見た。

本当にきれいな人だ。色白で、薄そうな皮膚。ぱっちりとした大きな目に長いまつ毛。薄く意志の強
そうな唇には、品の良いローズピンクの口紅。
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