シングルマザー・イン・NYC
「お父さんのおばあちゃん、迫力あったねー。ちょっと怖かった。僕、緊張しちゃった」

慧がテーブルに割りばしを並べながら、笑った。

「じゃあ、あの時は勇気を出して、話してくれたのか?」

「うん、そうだよ。みんな黙ってるから僕が、って思った」

「そうか。ありがとうな」

 樹さんが慧の頭を撫でた。

 湯食は、お寿司だ。

 帰りに三人で近くのスーパーに寄ったのだが、「疲れているだろうから」と樹さんが気を遣ってくれ、お寿司と唐揚げ、インスタントのお吸い物を買って帰ってきた。

「ごめんね、食事は私が作るって言ったのに」

「いや、俺こそ、帰国翌日に外出させて申し訳なく思ってる。明日はゆっくりしてて。俺は仕事に行くから。その代わり、正月はできるだけ一緒にいられるようにする」

「初詣、行く?」

「よく知ってるな」

「絵本で読んだ」

「行きたいか?」

「うん」

「じゃ、行こう」

樹さんが慧のお皿に、唐揚げを卵のお寿司を取り分けてやる。
その仕草はごく自然で、まるでずっと私と一緒に慧を育ててきたかのような父親ぶりだ。

「ありがと。僕、お父さんとお母さんに質問があるんだけど」

「何?」

「赤ちゃんって、いつ生まれる?」
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