シングルマザー・イン・NYC
「希和は幸せね、素敵な人たちに囲まれて」

参進の儀のために並ぶとき、母がしみじみと言った。 

都心とは思えないほど広く、樹々がうっそうと茂る神社。

その境内を、私たちは二列になって歩く。
神職、そして二人の巫女さん。
樹さんと私。

すぐ後ろに慧と、彼を挟んで私たちの母親(ここだけ三人)。
親族、そして私と慧をずっと見守ってきてくれた大切な人たち。

神殿までに百メートルほどの距離を、ゆっくり進む。

一歩一歩、これまでのことを思い出しながら。

今の幸せをかみしめながら。

そしてこの幸福が未来も続くことを、祈りながら。

「希和」

樹さんの静かな声。

「何?」

「すごく綺麗だ」

「――ありがとう」

私たちは、そっと視線を交わした。

けれども、厳かで静謐な雰囲気はここまでだった。

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