シングルマザー・イン・NYC
二十メートルほど歩いたところで、周囲の空気がふわっと変化した。
ここは都内中心部の古式ゆかしい有名神社――観光客も多く訪れているのだ。

まず反応したのは外国人で、口々に「ビューティフル!」「アメイジング!」などと言いながら、私たちにスマホを向けた。次は日本人だ。

「あの人、三上総理に似てない⁉」

「ほんとだ。しかも新郎って、篠田大臣じゃない……?」

「一般人と結婚したって報道されてたけど、奥様の後ろの人たち、一般人には見えないね……。しかも超イケメンが二人も。モーニング、似合いすぎ」

「お子さんかな、あの男の子、かわいい」

人々の視線が集まる。

慧が私の着物を引っ張った。

「お母さん、みんな喜んでるよ。手、振ってあげれば?」

「できないの。静かにおすましして歩くの」

「そうなの? いいじゃん、挨拶すれば。みんな喜ぶよ」

「いやあ、やっぱりバレるもんだなあ」

後ろから、総理のお気楽な声がした。

「お父さん、総理、手を振ってるよ」

「ええ? ――ほんとだ」

後ろを振り返った樹さんは、ちょっと呆れたような声を出した。

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