シングルマザー・イン・NYC
三上総理は「やあやあどうも」と、群衆に応えていたのだ。

「篠田大臣ー!」
「こっち向いてくださーい!」
「花嫁さーん!」

どんどん人が集まってくる。
どこにこんなにいたのかと思うほどだ。

「仕方ないな」

樹さんが歩みを止めた。
雰囲気を感じ取り、神職と巫女さん達も止まる。
「希和」

樹さんが囁いた。

「左右それぞれ一礼して、また歩こう」

樹さんと私は、私たちを取り囲みつつある皆さんに頭を下げた。

隣にいた慧も真似をした。

それは列に連なる全員に伝わり、礼をする文化がないカミーユさんやアレックス達まで、ぎこちないながらも、同じように振舞った。

すると辺りが一瞬しんとなり、やがてぱちぱちと拍手が聞こえてきて、それはあっという間に、盛大な拍手になった。

「ありがとー!」

慧が元気よく応え、樹さんと私は失笑してしまい、私たちが楽しく笑い合う表情をとらえた写真はSNSに拡散していった。
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