シングルマザー・イン・NYC
「すごく素敵だった。感動した。ありがとう、参列させてくれて」

私の後ろに座るアレックスが、目尻をそっと抑えるのが鏡越しに見えた。

彼は、私の髪を結い直してくれているのだ。
神前式を終えた私たちは、樹さんの実家の一部屋にいて、庭で開かれるパーティーのために、ここで準備中。

「泣いてるの?」

「うん――希和は俺の結婚式の時、泣かなかったよな」

「ごめん。でも寂しかったよ。もちろん、嬉しさの方が大きかったけど」
 
そして夕暮れのウェイブ・ヒルでの挙式は、とても美しかった。

「はい、できたよ」

私のくせ毛を生かし、ややゆるめのアップにした髪にアイリスを一輪刺すと、アレックスは言った。

「幸せに、希和」

「ありがとう」

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