シングルマザー・イン・NYC
出産後の生活は、日本よりハイペース(という言い方が的確かわからないが)だ。
まず、退院は出産翌日。
ほんとに産むためだけに入院する、という感じだ。
自宅に戻って三時間おきの授乳生活が始まったと思えば、二か月後には職場復帰。
私が特別なのではなく、日本とは産休・育休のシステムが違うからで、ワーキングマザーたちは平均十週間で職場復帰していると、何かで読んだ。
そんなわけで、退院二週間後には、ナニーさん探しを再開した。
再開、というのは、出産前も探してはいたのだけれどよい人が見つからず、中断していたためだ。
私は慧をバイリンガルに育てるつもりで、そのためには日本語か英語のネイティブが理想的だ。
けれども見つからず、ヒスパニック系のナニーさんも候補に入れなくては……と考え始めていた。
「ヒスパニック系かあ。日本語はもちろん英語も訛ってると思うけど、考えようによっては、慧、スペイン語も覚えられるかなあ。すごいねえーケイ、知らないうちに三か国語ペラペラになっちゃうよ~」
食後、ソファでアレックスが慧を抱っこしながら語りかけた。