シングルマザー・イン・NYC
転機
部屋に戻ってしばらくすると、フロントから電話がかかってきた。
「キワ? お客さんが見えてます。カミーユさん。部屋にあげても良いですか?」
「はい、お通ししてください」
3分ほどして、ドアベルが鳴った。
空けると立っていたのはもちろんカミーユさんで、ゴージャスな毛皮のコートを羽織っていた。
「キワ! 元気そうで安心したわ!!」
ぎゅうっとハグされる。
「カミーユさんも。来ていただいてありがとうございます。コート、素敵ですね」
この国では、相手を褒めることが多く、私も何か気付けば褒める癖がついた。
「フェイクファーよ」
いつもの優美な笑みを浮かべ、カミーユさんはコートを脱いだ。
「そちらは、お母さまね?」
そして母と握手。
「あなたの娘さんは、素晴らしいわ。いつも本当にお世話になっています」
ゆっくり話してくれたので、母も理解できたようだ。
「サンキュー!」
と笑顔で返す。
わが母ながら、度胸がいい。