シングルマザー・イン・NYC
「慧は?」

カミーユさんが、いかにもワクワクしている様子で振り返った。

「今、お昼寝中で」

と言ったところで時、寝室から元気な鳴き声が聞こえてきた。

「あら、私の声で起こしちゃったかしら」

カミーユさんが肩をすくめた。

久しぶりに会ったけれど、本当に表情豊かで華やかな人だなあと思う。
そして素直だ。

「かわいいわねえ。私も赤ちゃん、欲しかったなあ」

慧を優しく抱きながら、そう言うのだ。

カミーユさんと母、そして私。
しばらく三人で慧をあやしたりミルクを与えたりしながら、お茶を飲んでおしゃべりした。

そうこうするうちに慧はまどろみ始め、私は彼をそっと、ベビーベッドに寝かせた。

リビングに戻った私に、ソファに座ったカミーユさんは言った。

「キワ、今日はありがとう。慧に会わせてくれて。お母さんにもお会いできてとても嬉しかった」

「いえ、こちらこそわざわざお越しいただいて」

「実は、今日来たのは慧に会う他にもう一つ目的があったの」

「そうなんですか……? あっ、美容室の予約ですね。私、年明けから復帰します」

だがカミーユさんは静かに首を振った。

「違うの。キワ、あなたをスカウトしにきたの」

「スカウト?」

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