シングルマザー・イン・NYC
未練たらたらの俺のメールに比べ、希和のなんと潔いことか。

このメールを読んだ時、俺の胸中は複雑だった。

失意、悲しみ――そして、ここまで書いても許してくれないのか、という苛立ち。

両親の離婚によるトラウマだとしても、あの時の希和がかたくなだったのは否めないだろう。
葵が美容室で嫌がらせのようなことをしたから、こじれてしまったのも無理はないのだが。
もしかしたらあの後、俺と別れたことを後悔したかもしれない。

あれから一年以上経過した今なら、落ち着いて話し合えるのではないか――そんな望みを抱き、俺は希和に会いに行くことにした。

これまで何度も悶々と考えていたが、法律事務所の仕事でニューヨークへの出張案件が発生し、会うなら今だ、と判断した。

電話もメールもなしだ。
事前に連絡して断られると面倒なことになる。

夜、アパートを訪ねてみよう。

――飛行機の窓ごしに雲海を眺めながらそこまで考え、俺は我に返った。

ニューヨークに着くまでに読み込んでおかなくてはならない書類はまだたくさん残っている。

今は仕事だ。

集中しろ、俺。
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